Google+ 今書ける事: 心の井戸(いつも書きかけ) その5

心の井戸(いつも書きかけ) その5

ボールの井戸 いつも書きかけ

「さーっ!!」2人同時に卓球台を前にラケットを構え、声を出す。
気合を入れる二人ぽっちの少女の目はキラキラと輝いている。
三球目攻撃のサインを出す。
みっちが、うん・・と、肯く。
たった二人の同級生卓球部員。
ダブルスの試合では風邪などひいていられない。欠場もできない。
2人しかいないのだから。

 団体戦は下級生を含めてTEAMをつくっていた。
弱小だろうが何だろうが、2人の卓球は中学生時代の生活の一部だった。
二人の家はどちらも貧乏といえば貧乏。
だからラケットは大切に、ラバーもそれほど買えないから大切にしていた。

 前年までは多くの先輩部員がいて、その指導に係っていた先生はそれまでに全国大会へと導いた事がある、ある意味有名な先生だったが、私らの時にはすでにたった2人かと見捨てられ、顧問担当の先生は代っていた。

 世の中理不尽だな。そんなもんだ世の中なんて。
「あたしたちの世代は完全に見捨てられたね。」
「うん。そうだね。けどいいんじゃない?やれるだけやろうよ。」
そんな話をしていた。

 見捨てられる事にはある意味慣れっ子よねと笑えるくらいだ。
けれど、自分達なりに頑張ったんだよ。
鼻で笑われようが、何だろうが頑張ったんだよ。
それだけでいいじゃないか。

 決勝戦。郡の大会だよ。ちっちゃい大会だよ。
それでもね、^^ 勝った! 優勝できたの。二人で勝ち取ったんだよ^^
最後の一点、21点目を取った時に二人で抱き合った。(当時は21点制)
たった二人の卓球同級生。




県大会は三位に終わった。
銅だ?メダルだよ。 頑張ったじゃん!!下級生も頑張ってくれたから三位になれたんだよ。

 一位になった時の優勝の記念楯も賞状も、三位になった時の思い出の品は全て簡単に捨てられてしまったけどね。親に。
頑張ったあたしらの試合など親は見に来る事もなかった。親としては期待していないし子供の部活に興味も無かったんだね。なんだか少し寂しいけれど親が来たらそれはそれで面倒だと思っていたかもしれない。
 けど、確かにあの場所で勝てたんだなぁ。そんな日があったんだなぁ。
多分、地方紙には新聞とかね、載っていたはずだよ。たぶんね。そんなこたぁどうでもいいか。(笑)

 何十年も前のあの日、汗にまみれて家の手伝いなどしながらも、二人の14歳の娘らは嬉し涙を流したんだ。あの日のあの体育館の床の感触は今でも忘れない。みっちの汗のにおいも忘れない。いい汗をかいた中学生時代は、どんな時代にも勝る笑顔いっぱいの思い出で満ちている。

 数年後、みっちは三人の母親になった。数十年後、私は猫の母親になった。(笑)



 カシャカシャと音を立てるTSPのピンポン玉。
凹んだら熱湯に入れて丸くしながら使ったピンポン玉でも、ほんとに潰れてしまうまで使ったんだ。

 たった二人ぽっちの卓球部員、あの頃の二人ぽっちは密かに輝いている。

 落っこちても痛くない、ピンポン玉で埋め尽くされている井戸の中にキャッキャとはしゃぎながら自ら飛びこんだ。

イケーッ!!

つづく

心の井戸・・いつも書きかけ



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